「社長、それは経営と時代の流れの両方を理解したオールラウンダーが必要だと想うからです」
CDO(最高デジタル責任者)という役職を数社で拝命してきた私が言うのもなんですが、「CDO」という役職は最も企業にとって非本質的なポジションであると同時に、現在最も企業にとって必要なポジションであるとも言えます。非合理な話にも聞こえますが、これは今の日本企業のほとんどがその非合理な中で経営されているから、と言えるのかもしれません。実際にほとんどの企業では冒頭に記述されている経営と時代の流れの両方を正しく理解している人間がおらず、経営トップが1人で足りない知識の中で悩んでいる、と言うのが現実なのだと感じます。
▶︎なぜ外部からCDOを招聘するべきなのか?
私が、短期間のものも含めて、CDOとして招聘された大半の企業様で感じていたのは、「経営陣でのコミュニケーション不足が伺える企業」「実質1人で経営されているような企業」が多いと言う実態があります。逆に言えば、優れた経営陣での議論が活発な企業は外部の経営人財など招聘しなくても大丈夫、たとえ知識が足りない領域においても各々が自分のポジションから情報収集し、それに基づき必要な意思決定、それから速やかな現場への落とし込みを行うことができている企業が多く見られます。要は「優れた経営陣での議論が行えている」企業にCDOは不要です。
この場合、「優れた」の定義づけも必要だと考えます。私たちが定義づける優れた経営人財は領域関係なく、下記の5つの要素があると認識しています。
⑴目的主義(自分のポジションだけでなく、会社の目的)
⑵学ぶ力がある(情報収集し、新しい内容を受け入れられる)
⑶現場を理解している(ただ偉そうにしているだけじゃない)
⑷データを読める(管掌領域のデータの相関関係くらいは理解している)
⑸人望がある(コミュニケーションが取れている)
上記のような要素を持つ経営陣が活発な議論を行なっているような企業にCDOは不要です。なぜなら、全てのデジタルシフトは全く新しい取り組みではなく、あくまで現在の取り組みの延長線上に過ぎないからです。ですので、上記のような要素を持つ経営陣であれば、それぞれ必要な内容を議論し、その情報を収集し、意思決定することは容易いことでしょう。現在の取り組みの延長線上で考えるだけで、その対象が少し新しい内容であるだけなのですから。
一方で、ほとんどの企業において、上記の要素を満たしているのは社長のみ、もしくは社長以外の面々だけだったり非常にバランスが悪いのが常です。会社の目的に対して考えを張り巡らせている人間と、そうでない人間に経営陣が分断されてしまっている(これは誰が悪いわけでもなく、そうなってしまうケースがある)と、お互いに不満は溜まり、新しい取り組みは進まなくなります。そうなると新しい取り組みを共に進められる理解者兼実行者を欲し、CDOの登用へと繋がるわけです。これは確かに理解できることではあります。
しかし、一点重要なのがCDOを登用したら全てがうまく進むわけではないということです。推進役はCDOが買って出たとしても、企業に深く根ざした考え方やその状況を作り出したのは現行の経営陣であり、その経営陣が推進を強烈に後押ししなければ事態は好転しません。CDOというのはデジタルシフトの潤滑油であると同時に、正しい経営の意思決定へ導く重要な存在ではありますが、一番の新参者ですし、CDOの大号令だけで会社が動くのであればもはや社長を交代した方がいいとも言えるでしょう。あくまで一番会社の変化を後押しするのは現行の経営陣です。まずは経営陣に適切な人財を選定すること。次に、その経営陣で活発に議論をすること。それを経た上で、さらに最適解を求めてCDOをその議論に参加させることができれば、一番いいと考えられます。
まずは、経営陣の現状を見直してみましょう、というのが正論かもしれませんね(笑)
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