B.なぜ私たちがDXという言葉をあまり使いたがらないのか?

「社長、それは流行の言葉(バズワード)は間違った使われ方をしているからです」


 私たちがAIの事業活用に躍起になって取り組んでいた時、奇しくも全く想像していなかったレベルで「AIブーム」が訪れました。このおかげでお会いすることのできた方々がたくさん存在する一方で、こういった流行の言葉のことを「バズワード」と呼びますが、いわゆる「バズワード」の弊害というものを全身に受けました。そういったところから、このバズワードというものには想うところもいろいろあり、今もなお「DX」や「AI」というバズワードの領域にいるので戦っているところです。


▶なぜバズワードの領域にいながら、バズワードが嫌いなのか?

 お分かりの方は多いと想いますが、バズワードは基本的に大変広義になってしまうものです。それどころか、広義ではなく最早便乗して全く間違った使われ方なども横行します。例えば、AIの時はデータ活用関連のものやらRPA(これはただのプログラミングのパワーポイント版みたいなもの)やら、挙句は全く概念だけで何も成立していないサービスもAIを謳ってプロモーションしていました。見ていてすごくひどいなぁと感じたのは初めて大規模な展示会を覗いた時です。まだみんなあまり意味が分かっていなかった「ディープラーニング」という言葉がそこら中に横行していましたが、実際にその中で本当にディープラーニングという技術を活用しているものは皆無だったりしました。あの頃は私たちはAIとは何か、機械学習とは何か、ディープラーニングとは何か、といろんな場所でまず定義から説明させていただいていました。
 とにかく、バズワードをある意味いいように利用する会社はあとを絶たない状況で、その当時はIR(上場時の企業価値をつけるための活動)などでも、やたらめったら使えてもいないAIを謳う会社が増えました。見た中で一番ひどかったのは上場時のホームページに動画で「IoT」「AI」と次々にバズワードが浮かんでくる企業があり、そこの社長様も「時価総額の創り方なら私に聴いてください(笑)」と豪語されていましたが、現在は初値の3分の1くらいで時価総額は落ち着いているようでした。見せ方だけでは長続きしない、ということですよね。そういう見せ方にだけこだわる企業、非本質的な企業がどうにも好きになれなくて、バズワードをますます嫌うようになった側面もあると想います。

 「DX」という言葉も、全く同じように使われています。「DX」と言う言葉は本来「デジタルトランスフォーメーション」の略で、これはデジタルを用いた事業モデルに転換することビジネスモデル自体をこのデジタルが前提となった世の中に合わせてモデルチェンジすることを指していました。デジタルツールを導入したりする行為や基幹システムを構築する行為自体に関しては、「デジタルパッチ」や「デジタルインテグレーション」などと名前がついていたりはしますが、これらは本来の意味での「DX」ではないということです。
 ところが、今は何でもかんでもWEB上で行っていれば「DX!DX!」と枕詞のように使われています。「●●のDXです」と言えばいいとどこもかしこも、ですね。実際に資金調達や上場する際には「DX銘柄(DXに関わる企業群)」に属すると認識してもらえるだけで、かなり有利に働いているのは事実、なのですが、これも一過性のある内容だと感じています。本質的に価値がある内容でなければ、いずれそのメッキは剥がれます。大事なのはメッキにならない本質的な取り組みを「バズワード」を気にせず行うことだと感じます。これは私たちもそういう想いでやっています。

 一方、会社の売却などを3年以内で考えられている経営者の方などは、ぜひそのバズワードに乗る取組みをしていただきたく考えます。これからも長く会社を経営される方であれば、一過性の強い見せ方だけだけの、見せかけだけの企業創りがよいとは考え難いですが、売却を前提としている等であれば、そういった流れをしっかり活用することは重要だと感じます。私たちがDXDX言わないのは、私たちの場合は長期的にチェンジマネジメントを支援する企業で在り続けたく、DXというのはその流れの一部に過ぎないと考えているからです。(ちなみに過去にもコチラの記事で同じような話を記述させていただいています)
 企業の目的によってバズワードとの向き合い方は違うと考えますので、ぜひあなたの会社にとって、最適な向き合い方をぜひ考えてみてください。

MiLAI Brain

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Copel-デジタル経営コンサルタント

全国を股にかけ、アナログな業界のデジタルシフトに従事する株式会社リトルクラウドの経営コンサルタント、Copel。上場を視野に入れた複数社でのデジタルシフトに従事。新規事業開発から社内インフラの刷新、マーケティング戦略の立案やデータ分析体制の確立など多岐に亘ってのいわゆる『DX的業務』に貢献。DXとはチェンジマネジメントであるという経営視点からの認識と、広範囲を統括できる知識量、社内社外問わない卓越したリソースマネジメント手腕が高く評価されている。

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